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狭心症

狭心症とは

心臓が絶えず動けるように、心筋へ栄養と酸素を運搬する専用の栄養血管を冠動脈と言います。冠動脈が狭くなると、心筋への血流が滞り酸素が足りなくなることで、胸痛などの症状が起こることを狭心症と言います。
冠動脈のけいれんによる収縮で起こる攣縮、冠動脈の動脈硬化によって冠動脈が狭窄します。また、難病の炎症性疾患である高安動脈炎や幼少期に川崎病に罹患した後遺症が原因となることもあります。

労作性狭心症

重いものを持ち上げる時に胸が苦しくなる、坂道や階段を上る際に胸が締め付けられるように痛む、休息を取ると解消されるという場合は、労作性狭心症の疑いがあります。労作性狭心症は、スポーツなどで大きな負担がかかった際に、「締め付けられる」「圧迫される」といったような胸痛の症状が起こります。痛む場所は様々で、みぞおち、前胸部、首、肩、腕、奥歯などで生じます。また、痛みが長時間続くことは少なく、数分もすれば消えます。
労作時は体内で大量の血液が使われるため、心臓も活発に動きます。冠動脈が狭窄していると、心筋に必要な量の血液を送ることができず、心筋虚血状態に至り、狭心症の症状が現れます。
症状が現れたらまずは十分に休息を取りましょう。ニトログリセリンの舌下錠を服用している方は、口に含むことで比較的すぐに症状が落ち着きます。これは、ニトログリセリンの効果で冠動脈が拡張されるためです。ただし、ニトログリセンは血圧を低下させてしまうため、倒れて負傷することがないように、使用前に椅子に座るようにしましょう。

冠攣縮性狭心症

じっとしている時でも狭心症の症状が現れ、特に明け方や夜中など寝ている時に症状が現れます。痛みが起こる場所や痛み方は労作性狭心症と似ています。発症原因は、冠動脈に一過性のけいれんが起こって収縮し、血流が滞ることだとされています。けいれんによって引き起こされることから、冠攣縮性狭心症と名付けられました。労作性狭心症と同じく、ニトログリセリンの舌下錠の服用が相応に効果を発揮します。また、発症予防にはカルシウム拮抗薬も有効です。

不安定狭心症

労作時に起こる狭心症の症状が、比較的軽度の労作でも起こるようになった際や、新たに症状が起こるようになった場合、不安定狭心症の疑いがあります。複数の狭心症の種類の中で、不安定狭心症は特に心筋梗塞の発症に繋がる恐れがあると考えられています。不安定狭心症と急性心筋梗塞を総称して急性冠症候群と呼ばれており、急性心筋梗塞に対応できる適切な処置が求められます。不安定狭心症は心筋梗塞の前触れと考えられており、不安定狭心症を頻発すると冷や汗や激しい痛みといった症状がないのに心筋梗塞を起こしているケースもあり、非常にリスクが高い状態と言えます。また、ニトログリセリンもあまり効果がないと考えられています。

微小血管狭心症

更年期前後の女性がしばしば発症するタイプのものです。冠動脈は狭くなっておらず、誘発試験でも冠攣縮が確認できないケースでは、微小血管狭心症の疑いがあります。X線血管造影検査で確認が難しいくらい微細な血管で狭窄が起こっている可能性もありますので、診断の難易度が高く、完璧に診断する方法はまだ存在しません。
労作の有無によらず胸痛が起こることがほとんどで、一般的な狭心症よりも症状が長く続く傾向にあります。また、ニトログリセリンはあまり効果がないため、カルシウム拮抗薬の服用が良いとされています。
更年期前後の女性はエストロゲンという女性ホルモンの分泌が低下するため、一酸化窒素の産生量も減少すると考えられています。一酸化窒素は血管壁の細胞で作られ、血小板凝集抑制作用や血管平滑筋の弛緩作用が起こります。そのため、一酸化窒素の産生量の減少が、更年期前後の女性がしばしば微小血管狭心症を発症することと関係していると考えられています。

狭心症の治療

薬物療法

血管の緊張を解き、心臓になるべく負荷がかからないようにすることで、血液が凝固しづらくなるようにすることを目指します。治療ではカルシウム拮抗薬・硝酸薬・ベータ遮断薬などいくつかのお薬を複合して使用します。また、アスピリンなどの抗血小板薬が使われることも一般的です。

カテーテル・インターベンション(PCI)

カテーテル・インターベンション（PCI）では、まず細い管状のカテーテルを冠動脈入口まで挿入し、カテーテルから冠動脈の中に挿入した針金を使って狭くなっている部分に風船（バルーン）を持っていきます。そして、風船（バルーン）を膨らませることで狭くなっている部分を内部から拡張します。拡張した後に、筒状の金属のチューブのようなステントを設置し、狭窄が再発しないようにします。様々な専門的な研究によると、風船（バルーン）を使うよりもステントを使う方が狭窄の再発を防ぐ効果が高いと分かったため、ステントの使用が一般的になりました。また、近年は狭窄の再発を防ぐためのお薬を塗った薬剤溶出性ステントを使用することもあります。こうした冠動脈インターベンションは局所麻酔下で実施し、所要時間は1～2時間くらいとなります。

バイパス手術（CABG）

バイパス手術（GABG）は、狭くなった血管の末梢に別の部分の血管（バイパス）を接続し、狭くなった部分を回避して血液が流れるようにする手術です。バイパスに用いる血管は、胸骨の裏にある動脈（内胸動脈）や足の静脈(大伏在静脈)がよく採用されます。また、腕にある橈骨動脈や胃壁に血液を送る右胃大網動脈が採用されることもあります。
3本の冠動脈全てが狭くなっている場合や、左冠動脈の付け根が狭くなっている場合は、インターベンション治療よりもバイパス手術が適していることもあります。
最近では、胸骨を切開せずに肋骨の間に小さな穴を開ける低侵襲心臓手術や、人工心肺を用いない心拍動下冠動脈バイパス手術が採用されることもあります。
冠動脈バイパス手術は全身麻酔下で実施し、術後は2週間程度の入院をお願いしております。