脂質異常症(高脂血症)とは
血液検査で調べる項目は、血液中の総コレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)、HDLコレステロール、LDLコレステロールの数値です。これらのいずれかもしくは複数が異常値となっている場合、脂質異常症の疑いがあります。
脂質異常症は自覚症状が乏しいまま進行することで動脈硬化の進行を招き、血管の狭窄や閉塞が起こって脳卒中や心筋梗塞などの重大な疾患を発症するリスクが高まります。
脂質異常症には遺伝的要因があると言われており、さらに不規則な食習慣などが複合することで発症に至ります。異常を示す項目によってリスク要因となる生活習慣には違いがありますが、食物繊維の摂取量が足りない、動物性脂肪を摂りすぎている、カロリーを摂りすぎている、過剰な飲酒などが原因となり得ます。
また、内臓脂肪型肥満の方は、脂質異常症だけでなく糖尿病もしくは高血圧を併発していると、動脈硬化の進行リスクが高まると言われています。
コレステロールの種類
総コレステロール (TC)
血中のコレステロールは肝臓で生成されます。胆汁、細胞膜、性ホルモンなどの生成にコレステロールは欠かせませんが、過剰に作られることで動脈硬化の発症・進行を招き、血管の狭窄・閉塞が起こって脳卒中や心筋梗塞、狭心症などの重大な疾患を発症するリスクが高まります。脂質異常症は自覚症状が乏しいまま進行するため、進行を止めるためには適切な対応が重要となります。
総コレステロール値の目安
数値 | 判定 | 所見 |
---|---|---|
280mg/dl以上 | 高度高コレステロール血症 | 速やかに専門医に相談し、進行を制御することが重要です。 |
240~279mg/dl | 中等度高コレステロール血症 | 生活習慣の見直しが重要ですが、他の生活習慣病も併発している場合は薬物療法を行うこともあります。 |
220~239mg/dl | 境界域 | 疾患を発症するギリギリの状態です。生活習慣を見直して発症予防に努めましょう。 |
130~219mg/dl | 正常 | 大きな問題はありませんので現状維持に努めましょう。 |
129mg/dl以下 | 低コレステロール血症 | 栄養が不足している恐れがありますので、甲状腺機能や肝機能を詳しく検査することが重要です。 |
中性脂肪 (TG)
飲酒や暴飲暴食で数値が高くなる傾向にあり、脂肪肝、肥満、糖尿病のリスクが高まります。小腸で吸収された中性脂肪は血液で運ばれてエネルギーの材料となります。しかし、過剰な中性脂肪は肝臓脂肪や皮下脂肪として蓄積されます。また、悪玉LDLコレステロールの増加によって、脳卒中や心筋梗塞、狭心症などの重大な疾患を発症するリスクが高まります。
中性脂肪値の目安
数値 | 判定 | 所見 |
---|---|---|
750mg/dl以上 | 高度高中性脂肪血症 | 膵炎などが起こっていないか検査します。禁酒、薬物療法、運動療法、食事療法をしっかりと行うことが重要です。 |
300~749mg/dl | 中等度高中性脂肪血症 | 運動療法、食事療法をしっかりと行い、500mg/dlを超えている場合は禁酒の必要があります。他の生活習慣病も併発している場合は、薬物療法も行います。 |
150~299mg/dl | 軽度高中性脂肪血症 | 軽めの運動療法や食事療法で改善する可能性があると考えられます。 |
30~149mg/dl | 正常 | 大きな問題はありませんので現状維持に努めましょう。 |
29mg/dl以下 | 低中性脂肪血症 | 原因疾患がある方は適切な治療を行います。 |
HDLコレステロール
HDLコレステロール(善玉コレステロール)は、血中の過剰なコレステロールを回収して肝臓に送り、血管に蓄積した悪玉LDLコレステロールを取り除く役割を担います。善玉HDLコレステロールが不足すると、悪玉LDLコレステロールがあまり多くない状態でも動脈硬化の進行を招く恐れがあります。
HDLコレステロール値の目安
数値 | 判定 | 所見 |
---|---|---|
100mg/dl以上 | 高HDLコレステロール血症・先天性異常の可能性 | 原因特定のために詳しい検査を行い、原因に即した生活習慣の見直しや薬物療法を実施します。 |
40~99mg/dl(女性はm50~109mg/dl) | 正常 | 大きな問題はありませんので現状維持に努めましょう。 |
20~39mg/dl | 低HDLコレステロール血症 | HDLコレステロールが不足しているため、動脈硬化が進行している恐れがあります。精密検査を行った上で、生活習慣の見直しや禁煙に取り組みます。 |
19mg/dl以下 | 先天性異常の可能性 | 原因特定のために詳しい検査を行います。 |
LDLコレステロール
LDLコレステロールは俗に言う悪玉コレステロールのことです。過剰に増えると血管の微細な傷に侵入してプラークができる恐れがあり、血管の狭窄・閉塞、動脈硬化、血栓生成といったリスクが高まります。また、脳卒中や心筋梗塞の発症に繋がる恐れもありますので、適切に数値を管理することが重要です。
LDLコレステロール値の目安
数値 | 判定 | 所見 |
---|---|---|
140g/dl以上 | 高LDLコレステロール血症や先天性異常の可能性 | 適切な薬物療法、運動療法、食事療法を行うことが重要です。先天性異常の疑いもあるため、原因特定のため詳しく検査することも大切です。 |
120~139g/dl | 境界域 | 動脈硬化の発症・進行を招く恐れがあります。生活習慣の見直しや禁煙によって改善できる可能性があります。 |
60~119mg/dl | 正常 | 大きな問題はありませんので現状維持に努めましょう。 |
コレステロール値の改善方法
脂質異常症の治療や発症予防のためには、食生活の見直し、適度な運動の習慣化、禁煙といった生活習慣の見直しが重要です。
生活習慣の見直しはその場限りでは効果がありませんので、無理のない範囲で継続できるようにしましょう。
食生活は、エネルギー摂取量を適量にする、暴飲暴食はしない、食事の栄養バランスに気を付ける、1日3食規則正しい食事を摂るなどを意識すると良いです。
運動は、1日30分くらいの有酸素運動を週3日以上行うことをお勧めします。なるべく階段を使って移動する、多少汗をかくくらいの早歩きでウォーキングするなども習慣化すると良いでしょう。
禁煙は絶対に行いましょう。喫煙によって動脈硬化の進行が加速するため、別の生活習慣病の発症や進行を招く恐れもあります。
患者様の病状に応じて薬物療法を行うこともありますが、医師の指示通りにお薬を飲むようにしてください。脂質異常症は自覚症状が乏しいため、進行しても病状が良くなってもご自身で変化に気づくことは難しいと思います。そのため、こまめに検査を受けることで、長期的な目線で根気強く治療を受けることが重要です。